認知症予防と運動 〜歳をとったからしょうがない?〜

加齢に伴い、さまざまな変化が私たちの体には起こってきます。ロコモティブシンドロームに代表される運動機能の低下だけでなく、認知機能の低下もその一つです。

“物忘れ”などに表現されるこの認知機能の低下ですが、図の青い曲線ように加齢に伴う通常の変化であればいいのですが、日常生活に支障をきたす状態になると、いわゆる「認知症」という状態となります。図の緑円のように、通常の加齢よりも認知機能の低下が進んではいるが日常生活に支障をきたすまでではない状態を「軽度認知障害」といいます。

厚生労働省はこの軽度認知障害の人数は、平成24年時点で400万人と推計を出しています。あなたも、もしかしたらこの予備軍かもしれませんよ。

とても大事なことは、この認知機能の低下の最も大きな要因が身体的不活動であるということです。裏を返せば運動することで、そして生活の活動性を上げることで認知症予防ができるということを示しているわけです。

“歳をとったからしょうがない”ではなく”歳をとってもやればできる”なのです。

運動で認知症予防?

運動をコントロールしているのは実は脳です。ということは運動すると脳が刺激されることは何となく想像できると思います。とすると、脳の病気でおこる認知機能障害も運動が関係している気がしますよね。

ある研究によると、身体活動量が多い人たちは記憶や物事を遂行するために使う脳の部位が、加齢とともに萎縮することなく保たれていたとの報告があります。また、ある調査では、週3回以上の定期的な運動の習慣がある人たちは認知症になる割合が少ないとの報告もあります。

まだまだ認知症と運動の関係は研究段階ではありますが、運動が認知機能の維持や向上に効果がある可能性が高いことは示されてきています。つまり、運動は認知症予防、軽度認知障害の維持改善に十分効果が期待できるというわけです。

どんな運動をすればいいの?

ここでは『ながら運動』を紹介します。頭を使う課題を行いながら運動をするというものです。自転車に乗って店に向かう道中に晩御飯はカレーにするから、あれとこれとを買って…と、日々頭を使いながら作業をしていますよね。要は、これと同じことです。

前述したように運動が認知機能へいい効果を出す可能性を述べましたが、「ながら運動」もまた、認知機能や記憶などに効果を出しているとの報告が出てきている、注目されている運動なのです。少し間違うぐらいの難易度に設定するのがコツです。ぜひ試してみてはいかがでしょう。

一人で気軽に行える「ながら運動」の一例です。

  • 足踏み+しりとり(口に出す)
  • 足踏み+昨日や今日の献立(口に出す)

複数人でも

  • 散歩+しりとり(2つ前の言葉から繰り返して答える)

5年後、10年後、自分の生活はどうありたいですか?生活の目標を設定しながら運動を継続してみましょう。これもまた「ながら運動」でしょうか。

※運動を実施するプログラムです。疾患をお持ちの方、痛みや血圧が高いなどの症状を伴う場合は医師のチェックを受けてから行うことをお勧めします。

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