骨粗鬆症性椎体骨折について

骨粗鬆症性椎体骨折(こつそしょうしょうせいついたいこっせつ)/いわゆる圧迫骨折

浜脇整形外科病院 院長 大石陽介

骨粗鬆症は骨量の低下と骨組織の微細構造の異常により骨折する危険性が増大する病態で、日本では640万人存在していると言われています。主たる原因は閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少と加齢による骨密度の低下で、それ以外に生活習慣病に伴う骨質の低下もあげられています。

骨粗鬆症に罹患している患者さんは、軽微な外傷で骨折することが多く、骨折を起こすと日常生活が制限され、寝たきりになる危険性もあります。今回は代表的な疾患として脊椎(せきつい)の椎体骨折(圧迫骨折)について説明します。

椎体骨折は軽微な外傷を契機に胸腰椎に発生することが多く、動作の変換時に強い痛みを訴えます。坐位、立位のX線で椎体の圧潰(あっかい)を認めますが、X線ではわからないことがあり、その際にはMRIでの診断が必要です。早期にしっかりしたコルセットなどで固定すれば約9割は骨癒合します。しかし、以下のように治療に難渋する症例も存在します。

(1)椎体骨折の再発

椎体骨折発症の主原因として骨粗鬆症があります。骨粗鬆症の治療をしなければ、1年の間に約20%に再骨折が生じると報告されています。骨折と同時に骨粗鬆症の治療も行うことが大切です。骨粗鬆症の治療には、食事、運動、薬剤の3つが主となります。薬剤は骨粗鬆症の程度によって異なりますが、椎体骨折が単数で骨密度がそれ程低くなければビスフォスフォネートの経口剤を中心に、椎体骨折数が複数、あるいは骨密度がかなり低い場合にはテリパラチドの注射製剤を勧めています。

(2)椎体骨折の偽関節

コルセットによる治療でも癒合不全が生じ、痛みが続くことがあります。この場合は、注射製剤を続けて骨癒合を待つか、セメントを注入し骨折部を固定します(経皮的後弯矯正術(けいひてきこうわんきょうせいじゅつ)(BKP))(図1)。BKPは侵襲が少なく翌日から起きることもでき、適応可能であれば高齢者にも施行できる手術です。ただし、BKP部位の再圧潰や隣接椎の骨折が高頻度に生じるので、術後もしばらくはコルセット固定が勧められます。

(3)遅発性麻痺と神経根症

胸腰椎椎体骨折では骨癒合不全や隣接椎間の不安定性により神経が圧迫され、骨折後しばらくしてから下肢麻痺が出現することがあります(図2)。一方、中下位腰椎骨折では狭窄(きょうさく)が併存することが多く、骨折を機に狭窄部に動的負荷が加わり神経根症状(下肢痛)が出現することがあります。どちらも手術適応になることが多く、注意が必要です。

 

(4)アライメント異常

骨折を生じると背中が丸くなり後弯を呈します。過度な後弯では重心が前方にずれ、長時間の立位で腰痛が生じます。高齢では後弯の矯正はなかなか困難ですので、さらなる後弯防止としての骨粗鬆症の治療や背筋訓練、また歩行の際には前方を支持するシルバーカーなどの使用が勧められます。

 

欧米人と比較し、日本人は骨折の主因である骨粗鬆症のための薬剤の使用率や継続率が低いことがわかっています。骨粗鬆症に対してもっと関心を寄せることが椎体骨折予防に働くと考えます。

 

 

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